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​コラム

妥協のない空間づくりへ。外構設計で大切にしたい価値観と伝え方

  • yoshimura821
  • 7月9日
  • 読了時間: 8分

更新日:8月19日

家づくりにおいて外構は、住まいの印象を大きく左右し、暮らしの質を高める重要な要素です。アプローチや植栽、塀など、外構は何を重視するかによって設計も大きく変わります。しかし、「なんとなくおしゃれにしたい」といった曖昧なイメージでは、施工会社に思いが伝わりづらく、理想と仕上がりにギャップが生じることも。この記事では、上質な空間を実現するための外構選びの視点と、希望を的確に伝えるためのポイントをご紹介します。


外構工事に求めることを整理する

外構計画において、最初に考えていただきたいのは、「自分は外構に何を期待しているのか」という本質的な視点です。外構は、住まいを美しく演出するだけでなく、暮らす人の安心・快適さを守り、日々の動線や時間の質にも関わる大切な要素です。


たとえば、防犯性やプライバシーの確保、眺望を生かす開放感、植栽の美しさ、門扉の利便性──それぞれに魅力があり、どれも実現したくなるかもしれません。しかし、すべてを均等に取り入れようとすると、方向性が曖昧になり、結果として満足度の低い仕上がりになることも。だからこそ大切なのは「優先順位」を定めることです。


何を最も大切にしたいのか。どの部分は妥協できるのか。たとえば「外からの視線を遮る安心感」を第一にするのか、「庭の開放感や植栽の華やかさ」を重視するのか──。理想の暮らしにふさわしい外構を実現するためには、ご自身の価値観を一度丁寧に整理することが、後悔のない選択へとつながります。


外構選びにおける4つの視点

上質な外構空間を実現するためには、要望をただ並べるのではなく、優先順位を明確にしながら選択肢を整理する視点が欠かせません。「こうしたい」という想いが先行しすぎると、理想がうまく言語化できず、打ち合わせが長引いたり、全体の方向性がぶれてしまう原因にもなりかねません。そこで鍵となるのが、自分にとって何が本当に大切かを見極めること。外構計画を具体化する上で、検討すべき4つの本質的な視点に目を向けることが、満足度の高い空間づくりへとつながります。


プライバシーの設計

外構は、視線を遮るだけでなく、心地よい安心感をもたらす“静けさのデザイン”でもあります。完全に外部からの視線を遮りたい方もいれば、程よく抜け感を保ちたい方もおられるでしょう。ご自身やご家族が、どれほどのプライバシーを求めるかによって、デザインは大きく異なります。たとえば、「少しの視線でも気になる」「通行人の気配が気になって落ち着かない」という方は、高い目隠し性を持つクローズドタイプの外構が向いています。一方、開放感や景観との調和を重視される場合は、セミクローズドタイプで柔らかな遮蔽を設けるのも一案です。


美意識を映すデザイン性

住まいの外構は、ファッションやインテリアと同様に、住まう人の美意識を映す舞台でもあります。クラシック、モダン、ナチュラル、シンプルリュクス…。ご自身が心地よさを感じるスタイルはどのようなものでしょうか。もしご家族で好みに違いがある場合は、色味や素材感をシンプルに統一しつつ、舗装・植栽・照明といった部分にそれぞれのこだわりを反映させることで、調和のとれた空間に仕上げることができます。普段から美意識を大切にされている方ほど、デザイン性への満足度が外構全体の満足度に直結します。


日々を快適にする機能性

外構は、見た目だけでなく暮らしの動線を整える重要な役割も担います。たとえば、駐車時に無意識に片側へ寄る癖がある、玄関から門までの導線が長い、重い門扉の開閉が負担……など、生活スタイルに合わない設計は、日々の小さなストレスの原因になります。そのような“暮らしの癖”をあらかじめ洗い出し、必要であればリモコンゲートやオートライト、バリアフリー設計などを取り入れることで、外構はより快適で自分らしい空間になります。


後悔しないためのコスト感覚

美しさも快適さも求めたい。でも現実的には、コストという壁も存在します。しかし、価格だけを基準に選んでしまうと、思わぬ後悔を招くことも。たとえば、安さを優先して設けなかった目隠しフェンスが原因で、隣家との関係にストレスを感じるようになった、というケースも実際にあります。

本当に満足できる空間は、「何にどれだけかけるべきか」という判断軸を持つことが重要です。信頼できる外構のプロに相談することで、コストを抑えながらも満足度の高いプランに仕上げることができます。


外構選びは施工例を多く見て感性を磨く

理想の邸宅を完成させるうえで、外構は暮らしの品格を決定づける重要な要素です。建物と自然、日常と非日常、そのすべてをつなぐ境界であり、住まいの第一印象を形づくる余白の美学でもあります。


4つの視点が明確になったら、次は感性の棚卸しをしていきましょう。各社の施工例やデザイン集を丁寧に見比べ、心を動かされた外構をリストアップしていきます。ポイントは、まだ機能や費用を考慮せずに、まずは直感的に「美しい」「心地よい」と感じるものを集めていくこと。好みが明確になるほど、プロとの打ち合わせもスムーズになります。


この時間は、ご家族との会話を育む大切なプロセスでもあります。「こんなアプローチなら、毎朝が気持ちよく始まりそう」「この石畳の質感、どこか旅先の思い出に似てるね」

そんな対話が、暮らしへの想像をふくらませ、住まいづくりの輪郭をより鮮明にしていくのです。


外構工事における優先順位の明確化

集めたイメージを眺めながら、次に行いたいのが優先順位の整理です。理想をすべて盛り込むことは難しく、選択には何を守りたいか、何に価値を感じるかという意志が求められます。このとき大切なのは、家族一人ひとりの想いに耳を傾けること。「私はこうしたいけれど、あなたはどう感じてる?」─そんな投げかけが、尊重と信頼を軸にした対話を生み出します。


一方の理想だけが色濃く反映された空間は、時間の経過とともに微細なストレスを生むこともあります。共に暮らすからこそ、個々の満足ではなく全体の調和を大切に。そこに、長く愛せる住まいのヒントがあります。


意見が分かれたら「最優先項目」に立ち返る

多様な価値観が共存するなかで、すべての理想を一致させるのは至難の業です。だからこそ、重要なのは、双方が本当に譲れない点に立ち返ることではないでしょうか。


たとえば、プライバシーの確保とコストバランスという異なる視点が交差する場合でも、遮蔽性のある素材選定や空間の使い方によって両立の道が見つかることは多くあります。理想と現実、その橋渡しを担うのが私たちの役割でもあるのです。


この共通の基点があることで、以降のプラン検討や仕様選定がスムーズに進み、結果的に納得度の高い仕上がりになるでしょう。


理想を伝える際の言葉選びのコツ

言葉の選び方ひとつで、提案の質は大きく変わります。単に「おしゃれにしたい」「広くしたい」といった表現ではなく、「どんな暮らしがしたいのか」「誰のために必要としているのか」という背景と理由を明確に伝えることで、設計の深度は格段に高まります。


・プライバシー重視:「人目を気にする家族が、安心して過ごせるように。外部からの視線を適度に遮る設計を希望しています」


・デザイン重視:「旅先で見た南仏の街並みに感銘を受けて以来、自然と調和する石材や有機的な植栽に惹かれます。そういった要素を取り入れたいです」


・機能性重視:「小さな子どもがいますので、動線の安全性と視認性に配慮した設計にしたいです。日々のストレスを軽減できる設計を目指しています」


・コスト重視:「雰囲気を損なわず、投資対効果の高い選択肢を希望しています。機能性や耐久性を保ちつつ、予算内で最適化できれば嬉しいです」


これらの表現は、単なる要望を超えてビジョンを伝える言葉になります。真摯に想いを共有することで、私たちとのやり取りも、より深く具体的なものになっていきます。


話し合っている夫婦

外構選びは、価値観を知る贅沢な時間

外構づくりは、家族の関係性やライフスタイルを改めて見つめ直す貴重な機会でもあります。何に心を動かされ、どんな場面に幸福を感じるのか。自分では気づかなかった相手の価値観に、ふと触れる瞬間があるかもしれません。


設計とは、単なる図面ではなく関係性のデザインでもあります。対話のなかに互いを思いやる気持ちが生まれ、その結果として生まれる空間には、暮らしの本質が宿ります。


建物と外構は切り離せない関係です。外構が整えば、建物そのものの存在感が高まり、住まい全体に凛とした品格が漂います。毎日の帰宅が、小さな感動に変わる。そんな風景を、今ここから描きはじめてはいかがでしょうか。


まとめ

外構は、日常の風景に豊かさと彩りを添える、大切な空間のひとつです。そこに何を求め、どんな心地よさを実現したいのか。その問いに向き合う時間は、これからの暮らしを見つめ直す、かけがえのないプロセスでもあります。あなたが大切にしたいのは、静けさでしょうか。美しさに満ちたデザインでしょうか。それとも、家族への思いやりや、快適さかもしれません。まずは、外構への想いをお聞かせください。理想のかたちは、言葉にすることからはじまります。ともに、上質な住まいをかたちにしていきましょう。





 
 
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